https://dl.acm.org/doi/abs/10.1145/1273445.1273458
「Three-Pass Approach」(三回読み)
各パスは特定の目標を達成し、前のパスの上に積み上がる。第一パスは論文の大まかなイメージを与える。第二パスは論文の内容を把握させるが、細部まではいかない。第三パスは論文を深く理解する助けになる。
第一パス
第一パスは、論文を鳥瞰するための素早いスキャンだ。さらにパスが必要かどうかもここで決められる。五分から十分、次の手順:
- タイトル、アブストラクト、イントロダクションを丁寧に読む
- 節・小節の見出しだけ読み、他は無視する
- 結論を読む
- 参考文献に目を通し、すでに読んだものを頭の中でチェックする
第一パスの終わりに、five Cs に答えられるはずだ:
- Category:これはどの種類の論文か。計測論文か。既存システムの分析か。研究プロトタイプの記述か。
- Context:どの他の論文と関係があるか。問題の分析にどの理論的基盤が使われたか。
- Correctness:仮定は妥当に見えるか。
- Contributions:論文の主な貢献は何か。
- Clarity:論文はよく書けているか。
この情報をもとに、これ以上読まないと決めてもよい。興味がない、その分野の知識が足りず理解できない、著者の仮定が無効、といった理由だ。自分の研究領域ではないが、いつか関連しうる論文なら、第一パスで十分である。
ちなみに、論文を書くとき、ほとんどの査読者(と読者)は一回しか通さないと思ってよい。一貫した節・小節タイトルを選び、簡潔で包括的なアブストラクトを書くこと。査読者が一パスで要旨をつかめなければ、論文はほぼリジェクトされる。読者が五分でハイライトをつかめなければ、その論文はおそらく読まれない。
第二パス
第二パスでは、証明などの細部は無視しつつ、より丁寧に読む。要点をメモするか、余白にコメントを書くとよい。
- 図、ダイアグラム、その他のイラストをよく見る。グラフには特に注意。軸は正しくラベルされているか。結果にエラーバーがあり、結論が統計的に有意か。こういうよくあるミスが、急いだ雑な仕事と本当に優れた仕事を分ける。
- 関連する未読の参考文献をマークして、あとで読む(論文の背景を知る良い方法だ)。
第二パスは最大で一時間。このあと、論文の内容を把握できているはずだ。誰かに、根拠つきで論文の主旨を要約できる。この詳細度は、興味はあるが自分の専門ではない論文に適している。
第二パスの終わりでも理解できないことがある。題材が新しく、見慣れない用語や略語があるからかもしれない。著者の証明や実験手法が分からず、論文の大部分が読めないこともある。根拠のない主張と前方参照だらけで、書きが悪いこともある。あるいは単に夜遅くて疲れているだけかもしれない。ここで選べる:(a) 論文を脇に置き、この材料を理解しなくてもキャリアがうまくいくことを願う、(b) 背景を読んでから後で戻る、(c) 粘って第三パスに進む。
第三パス
論文を完全に理解するには、とくに査読者なら、第三パスが要る。鍵は、論文を仮想的に再実装すること、つまり著者と同じ仮定を置いて仕事を再現することだ。この再現と実際の論文を比べると、イノベーションだけでなく、隠れた欠点と仮定もすぐ見える。
このパスは細部への注意が要る。すべての文のすべての仮定を特定し、疑う。さらに、自分ならそのアイデアをどう提示するか考える。実と虚の比較は、論文の証明と提示の技法への鋭い洞察になり、自分の道具箱に加えられる可能性が高い。このパスでは、将来の仕事のアイデアもメモする。
初心者なら四〜五時間、経験者なら一時間くらい。終わりには、記憶から論文の全体構造を再構成でき、強みと弱みを指摘できるはずだ。とくに、暗黙の仮定、関連研究への欠けた引用、実験や分析手法の潜在的な問題をピンポイントで挙げられる。
文献調査
文献調査は、論文を読む力の試金石だ。何十本も読む必要があり、馴染みのない分野かもしれない。どの論文を読むか。三回読みの使い方はこうだ。
まず Google Scholar や CiteSeer などの学術検索と、よく選んだキーワードで、その領域の最近の論文を三〜五本見つける。各論文に第一パスをかけて仕事の感触をつかみ、related work を読む。最近の仕事の縮約と、運がよければ最近のサーベイ論文へのポインタが見つかる。サーベイが見つかれば終わりだ。サーベイを読み、幸運を祝う。
そうでなければ第二ステップ。書誌の共有引用と繰り返す著者名を探す。それがその領域のキー論文と研究者だ。キー論文をダウンロードして脇に置く。キー研究者のウェブサイトを見て、最近どこに出しているかを見る。
それがその分野のトップ会議を特定する助けになる。優れた研究者は通常トップ会議に出すからだ。
第三ステップは、それらのトップ会議のサイトに行き、最近の proceedings を見る。素早いスキャンで、最近の高品質な関連仕事がだいたい分かる。これらの論文と、先に脇に置いた論文が、調査の第一版になる。これらに二パスする。以前見つからなかったキー論文をすべてが引用していれば、入手して読み、必要なら繰り返す。
経験
過去15年、この方法で会議論文集を読み、レビューを書き、背景調査をし、議論の前に論文を素早く見直してきた。この厳密な方法は、鳥瞰する前に細部に溺れるのを防ぐ。一組の論文の査読にどれだけかかるかを見積もれる。必要と時間に応じて、論文を見る深さを調整することもできる。